2016/06/30

『レインコートを着た犬』吉田篤弘




あー、このジメジメとまとわりつくような湿気はいつまで続くのかしら。


湿気は嫌だけど、雨は別に嫌いではない。

雨が続いているときこそ、読みたくなる本。

吉田篤弘の「レインコートを着た犬」。



「つむじ風食堂の夜」、「それからはスープのことばかり考えて暮らした」に続く、

月舟町を舞台にした物語。


小さな映画館月舟シネマの看板犬ジャンゴが主人公。


ただただジャンゴの目線で静かに進む物語の中に、

生きることへの希望や意味、喜びが綴られていて、

まさに雨が希望に感じられるお話でとてもほっこりした。


雨の音を聴きながら、ゆっくりと丁寧にページをめくることさえ、

とても美しい一瞬に変わるような本。



「生きなければ答えは出ない。

生きれば生きるほど、それまで見えなかったものが見えてくる。」



「雨は地球の喜びだったのである。」


「本当に好きなら、やめないこと。逆に云うと、

やめたってことはなんだかんだ云っても、気持ちがさめたってことだ」


名言がいっぱい。

胸の奥のほうからじんわりと広がる温かい言葉たち。




きっと、雨の日が待ち遠しくなる本。




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